冠動脈CT検査において心電図同期は必須となります。
心電図同期を行うということは、その分撮像時に考えることが増える、ということです。
どうしても混乱しがちになると思いますので、初心者の方向けに検査手順を説明します。
CT担当になったばかりの方、これから冠動脈CTの予習や復習をする方に読んでいただけたらと思います。
ここでは一番シンプルなパターン(冠動脈単体を狙って撮像)を紹介します。
注意:この方法はC社のCT使用経験に基づきます。根本の原理は変わらないと思いますが、ご了承ください。
事前準備
冠動脈CT検査は心電図同期を行うため、通常の検査に比べ時間がかかります。
検査が長くなれば患者さんの負担にもなりますし、検査遅延の原因にもなります。
なので、事前準備は欠かせません。そして事前準備はどんなに知識や経験が無くてもできることです。
胸部レントゲンにより心臓の位置を確認
事前に心臓がどの位置にあり、どのような形態をしているか把握しておきましょう。
後述しますが、ポジショニングや心電図を貼る際に、把握しておいた方がいいです。
心電図の電極等をセット
心電図の電極は3個または4個使用します。事前にコードに繋いでおいた方が、検査をスムーズに行えます。
肌は柔らかいので、電極を貼ってからコードを繋ごうとすると大変です。接続部は案外脆いので、故障の原因にもなります。
テープでコードを固定するのであれば、事前にテープを用意しておくのも手です。
ポジショニング
基本的にはSupine、Feet First、両上肢挙上で検査を行います。身体を真っ直ぐに寝かせます。
(心底部が平らになるように、身体を斜めに寝かせるといい、という発表を昔聞きましたが、議論の余地ありです。)
ここで意識すべきは心臓の位置です。CT検査はガントリーの中心(アイソセンター)に近づくほど空間分解能が良くなります。
多くの患者さんの場合、心臓は正中からやや左側に位置しています。なので、寝台中心に対し身体を少し右腕側にズラしてポジショニングをします。
ルート類にも注意しましょう。
心電図装着
心電図の装着については、以前別の記事にて紹介しましたので割愛します。
横隔膜付近の抑制
心臓は横隔膜に近接しています。
呼吸によって腹部(横隔膜)の動きが大きくなるのを防ぎます。
抑える際は、丸めたタオルなどを腹部の上に置き、ベルトで固定します。
固定するときは、呼気の状態で息止めをしてもらいましょう。
スカウト像開始の位置合わせ
スカウト像はどのくらい必要でしょうか?
基本的には心臓しか撮らないわけですから、心臓が入っていればいいんです。
僕は胸鎖関節付近をスカウト像の撮影開始位置としています。ギリギリを攻めて失敗するのは良くないですね。
スカウト像について
僕は胸鎖関節付近から心底部まで撮ると書きました。
臥位の状態における心臓の位置を把握します。
スカウト像を2方向撮ることで、心臓を中心としたFOVを設定することが可能です。
先ずは単純CT
単純CTはある程度余裕を持って組みます。
気管分岐から心底部まで入っていれば十分です。
単純CT撮像前に、心電図取得をします。ここでしっかり心電図の波形を確認しておきましょう。期外収縮などの不整脈が出る場合もあります。
単純CTの目的はカルシウムスコア(冠動脈石灰化定量解析)と造影時の撮像範囲決定です。
冠動脈の石灰化は、心血管イベントに大きく関係しています。動脈硬化においても石灰化は存在します。
造影時の撮像範囲は冠動脈から心底部までです。切り切れる範囲から、マージンはそれぞれ20mmくらい取っておいた方がいいと思います。
基本的に右より左冠動脈の方が高位なので、左冠動脈の高さを見ればいいですが、右の冠動脈も入っているか確認しておいた方が無難です。
また、スカウト像と実際に撮った単純画像を見て、大きくズレていないか確認することも大事です。
なぜなら、大きくズレていた場合、呼吸抑制がバラバラである可能性があるからです。
いよいよ造影CT
撮像範囲は前述の通りです。
ヘリカルスキャンと(いわゆる)ボリュームスキャンがありますが、今回はヘリカルスキャンについて紹介します。
冠動脈CTにおいて、動いているものは何でしょうか?
それは
- 寝台
- 管球
- 心臓
の3つです。
心電同期撮像は、心臓が動いていないように見せる手法です。この3つに着目します。
心臓はHRに着目
心臓は常に動いています。動きの指標に、HR(Heart Rate:心拍数)を用います。
心電図取得から、患者さんのHRがどの程度か把握しましょう。
管球は回転速度に着目
確認したHRから、回転速度を選択します。
選択する際は、HRに対し時間分解能が最も良いもの(最も低いもの)を選択します。
寝台はヘリカルピッチに着目
超簡単に言えば、ヘリカルピッチは寝台の移動速度です。
心臓がゆっくり動いているのに、寝台が速く動いてしまうと、データを欠損する恐れがあります。
ある地点の情報を収集する前に、寝台が速く動いて通りすぎてしまう、みたいな感覚ですね。
欠損しないであろうヘリカルピッチを選択しましょう。
設定が決まったら最終的な時間分解能もチェック
HRに対し、冠動脈がブレないであろう時間分解能があります。
つまり、その時間分解能を満たしていなければ、撮ってもブレている画像になる可能性が高いということです。
造影条件について
撮像パラメータが全て決定したら造影条件を決めます。
造影条件は、どのくらいの造影剤量を、どのくらいのレートで注入するか(何秒注入か)決めます。
ボーラストラッキング(BT)法、テストインジェクション(TI)法、テストボーラストラッキング(TBT)法があります。
今回はBT法について書きます。
BT法は定めたスライスにてCT値をモニタリングし、あるCT値に達したところで撮像します。
(自動で撮像する場合と、手動で見て撮像する場合があります)
造影条件は体重に対し、フラクショナルドーズ22.2mgI/kg/secを使用するパターンが多いです。
この基準を用いる場合は、先ず体重を入力します。するとレートが決まります。
次に注入時間の設定を考えます。注入時間は撮影時間+6秒が一般的かと思います。
また、最低でも造影剤量は50mL、注入時間は12秒あった方がいいという話もあります。注入レートはボーラス性を担保するために、3.5mL/secはあった方がいいです。
撮影時の注意点
HRの変動が起きることは、よくあることです。
撮影中はリアルタイムで出てくる画像も見なければいけませんが、HRにもしっかり目を向けましょう。