肺野HRCTを再構成する際に、頭尾方向をどの範囲に決定するか迷う方も多いのではないでしょうか。
僕自身、以前はかなり迷うことが多かったです。
同じように迷われている方に、一つの参考として、この記事を読んでいただけたら幸いです。
HRCTって何?
HRCTとは「High Resolusion CT」の略で、高分解能CTを意味します。
HRCTは特殊な技術が要らない手法です。
FOVを小さく絞り、スライス厚を薄く再構成することで、HRCTを作成することができます。
FOVは200前後、スライス厚は1mm前後を用いることが多いと思います。
FOVを小さく絞ることで、ピクセルサイズが小さくなります。これにより空間分解能が良くなります。
また、スライス厚を薄くすると、パーシャルボリューム効果の影響を低減することができます。
HRCTは結節と周囲の気管支・血管との位置関係を見せるために作成します。
もちろん結節影だけでなくすりガラス影や浸潤影も同じ理由で作成します。
HRCTは胸部以外でも使用することがありますが、今回は割愛します。
ちなみに…
特発性間質性肺炎の診断・治療ガイドラインでも、HRCTの有用性について言及されています。
HRCT の読影では小葉内の所見の分布を小葉中心性,汎小葉性,小葉辺縁性と非小葉性,さらに気管支血管束周辺に分けてとらえることで,従来はパターン認識と経験によって診断していた胸部の画像を論理的に解析できるようになった。
結節影の定義について
よく「結節影周辺のHRCTを作って」と依頼があります。僕が初めてHRCTの再構成方法を教わったときは、「結節影を見つけたらHRCTを作るんだよ」なんて教わっていました。
では結節影とはそもそも何でしょうか?
直径3 cm以下の類円形の陰影をいいます。
原発性肺がんや、大腸がん、腎がんなど他の部位からの転移、結核、肺真菌症(カビで起こる病気)、非結核性抗酸菌症、陳旧化した肺炎、良性腫瘍(過誤腫など)などに見られます。
結節影だからといって全てが悪性というわけではありません。過去の炎症が瘢痕化したものや良性のものもあります。
つまり、フォローアップが重要というわけです。
3cm(30mm)以下と定義されてはいますが、実際に見るのはもっと小さいですね。数mmサイズの結節影の方がよく見かけると感じています。
通常提出している画像スライス厚だと、パーシャルボリューム効果の影響により埋もれてしまうので、スライス厚を薄くする必要がある、ということがお分かりいただけたでしょう。
再構成するときのポイント
先ずは撮影目的を確認
CT検査は基本的に撮影目的が記載されています。
胸部異常影と書かれていることもあれば、右上葉結節影、右S9異常影と書かれていることもあります。
詳しい部位が書いてあれば、依頼医師はそこを中心に精査したいので、最低限その範囲は作成することをオススメします。
過去の画像があれば読影レポートを確認
過去に検査をしている人であれば、読影レポートを確認しましょう。
放射線科医が読影していれば、どこの部位に何が写っているか、記載されています。そこを中心につくれば、フォローアップの目的を十分満たします。
過去の作成範囲をフォローアップ
放射線科医が指摘している部位を、過去のHRCRが満たしているのであれば、同じ範囲をフォローアップとして作成しましょう。
前回無かったところにあったら…
前回のCT検査時に結節影が無かった場所に、新たに結節影が見つかった場合は、その範囲も作成しましょう。
つまり肺野をしっかり見ることができる力が必要になります。
僕はいつも右肺と左肺をそれぞれ1往復して確認します。
右肺背部側→右肺腹部側→左肺背部側→左肺腹部側のような順番で見ています。
逆に前回あったところが無くなっていたら…
良性の結節影は消失することがあります。
消失していた場合は作る必要がないです。依頼医師や放射線科医から依頼があれば作成してください。
上下(頭尾)方向の範囲について
僕は常に結節影の上下30mmは含むようにしています。
そして、結節影のセグメントが分かりやすいように、主気管支くらいまでは入れるようにしています。
結節影の上下30mm以内に主気管支が入っていればそのままです。
スライス厚とスライス間隔について
実はHRCTには大きく分けて2種類あります。
一つは冒頭で紹介した拡大Thin Sliceです。こちらは当院ではスライス厚/スライス間隔を1mm/1mmとしています。
つまりFOVを小さく絞り、スライス厚を薄くし、かつ連続した画像です。
もう一つはFOVを小さく絞らず、スライス厚のみ薄くするパターンです。こちらは当院ではスライス厚/スライス間隔を1mm/5mmとしています。
つまり、連続していない画像です。
では後者はどんなときに使うかと言うと、結節影を伴わない肺炎や、癌転移などによって生じたびまん性に広がる多発粒状影を見せる際に使用します。
軟部(縦郭)条件は作成するの?
この辺も施設によって様々だと思います。
単純CTの場合、腫瘍内部の情報はあまり分かりません。造影CTの場合は、腫瘍の種類によっては造影のされ方が異なるので、軟部条件のHRCTがあってもよいと考えます。
一番作成した方がよいと考えらえるのは、腫瘍が気管支や血管に隣接しているときです。