膝関節は歩行や運動において中心的な役割を持つ関節の一つです。
膝の疾患は骨折以外にも靭帯損傷や変形性膝関節症など多岐に渡ります。
そして骨撮影にて比較的多く来る撮影です。
今回はそんな膝関節撮影について、立位時を中心に書きます。
※「関節を抜く」という表現は「関節窩を適切に描出する」という意味で書きます。
膝関節とは
関節というからには2つ以上の骨から構成されています。
どんな部位においてもそうですが、骨撮影では関節を構成する骨の種類とそれらの構造を理解する必要があります。
膝関節は大腿骨・膝蓋骨・脛骨の3つの骨で構成されています。
ここでは腓骨とファベラ(腓腹筋頭種子骨)もポイントになるので抑えておいてください。
というわけで、僕の手書きイラストを載せます。
これで少しはイメージがつくでしょうか?
もちろん教科書には詳しく書いてあるはずなので、そちらでしっかり勉強していただければと思います。
ファベラとは
腓腹筋外側頭内にある種子骨の一種です。約2~3割の方にあると言われておりますが、
僕の体感では結構見かけるように思います。
膝関節正面撮影のコツ
X線中心は腓骨頭で確認
膝関節正面撮影ではX線中心を膝関節(顆間窩)にします。
皆さんは、その高さをどのように合わせていますか?
僕は腓骨頭を触知し、そこから約一横指分頭側側に位置を合わせています。
正面位の合わせ方
大腿骨両側上顆を蝕知します。膝側面の少し裏側を触りにいく感じです。
感覚的には少しだけ内旋する感覚ですが、当然個人差があります。
位置としては、膝蓋骨(パテラ:Patella)が大腿骨遠位端の中央部になる位置です。
また、TKA(人工膝関節置換術)を行っている場合、通常よりも若干内旋気味にすると抜けます(経験則)。
頭尾方向に10°振るパターンと振らないパターン
脛骨の関節面が平らになるようにする(関節を抜く)には、FPD(またはカセッテ)に対し
頭尾方向に約10°振ることがコツになります。
一般的にはそれでよいのですが、疾患によっては関節窩がつぶれてきてしまう場合もあります。
OA(変形性関節症)やRA(関節リウマチ)では軟骨の変性摩耗が起きます。X線管を振らずに撮影した方が、変性摩耗の評価がしやすいと考えられます。
また、TKAを行っていれば、脛骨上面と膝蓋骨の関節面に、ポリエチレンでできた軟骨が組み込まれており、X線管を振らなくても関節面を抜くことができます。
X線管を振らなければいけないパターンとそうでないパターンについては、覚えておいて損がないです。
膝関節側面撮影のコツ
側面撮影について
当院では、側面位は正面位と違い、X線管は特に振りません。
また、正面位から約10°外旋することで合わせています。
正面位の位置から全てを予測する
X線中心は膝関節間隙の高さですので、側面でも正面と同じ高さにX線を入射します。
つまり、正面撮影を10°振って撮っている場合、X線中心の位置をしっかり覚えておかなければいけません。
検査着に着替えていれば検査着の横側をねじり、しわにしておくと分かりやすいです。肌が見えていればどの部分なのか、記憶しておきましょう。
また、正面位がどの角度だったかも記憶しておきましょう。自分が正面位だと思って撮った画像は本当に適切な正面位だったのかを確認します。
僕は分かりやすく、足趾の向きで判断しています。足趾のⅡ指とⅢ指の位置を基準に見ています。
どうやって修正する?
先ずは自施設の再撮影基準を確認してください。これが頭に入っていないと、どうしようもありません。
正面位の修正方法
基本的に外れることはないと考えていますが、膝蓋骨の位置がポイントとなります。
膝蓋骨が中心よりも外側に大きくズレていた場合、内旋するといった形です。
脛骨と腓骨の位置関係も一つの目安にはなります。
側面位の修正で見るべきところ
側面位で再撮影を行うのは、ほとんどの場合が大腿骨内顆と外顆の重なり不良だと考えられます。
なので、側面位の画像を見て大腿骨の内顆と外顆を見分けられなければいけません。
そして、左右方向と頭尾方向、それぞれどの程度ズレていて修正しなければいけないのかを確認します。
内顆と外顆は約8cm程度離れているので、外顆に比べ内顆がわずかに拡大します。
大腿骨裏の顆間窩の見え方が変わってきたり、大腿骨と膝蓋骨(+ファベラ)の位置関係も変わります。
また、脛骨と腓骨の位置関係も抑えておきたいポイントです。
側面位 左右方向の修正
適切な位置に対し内旋している場合、大腿骨前面に膝蓋骨が乗ってきたり、
脛骨と腓骨近位端が大きく重なってきます。
適切な位置に対し外旋している場合、顆間窩が広く描出されたり、脛骨と腓骨近位端が大きく分離されます。
側面位 頭尾方向の修正
大腿骨内顆が外顆よりも足側に大きくズレているときは、下腿の傾きを修正します。
上記のズレは、足関節を中心に膝を外側へ傾けることで修正できます。
画像に慣れることが一番大事
つまづきやすい部分はやはり側面撮影だと考えます。
そこで、適切な角度の画像と、過度に内旋・外旋してしまった画像をイラスト化しました!
要チェックです。
先ずは適切な角度の画像です。
次に、過度に内旋してしまった画像です。
最後に、過度に外旋してしまった画像です。
とにかく慣れるためには、日々、画像に目を通すしかありません。
おわりに
僕自身、1年目の頃は骨撮影のことが全然分かっていませんでした。今も怪しい部分は勉強して補っている状態です。
膝関節でもどこの関節でも、毎日画像を見て慣れることが大事だと考えます。