当たり前の話ではありますが、造影CTを行う際はルートの確保が必要となります。
ルート確保にまつわる話を書きます。
基本的に右肘静脈で確保
第一候補は右の肘(右の尺側皮静脈)となります。
肘静脈がどこにあるかというと…
なぜルートを右肘静脈で確保するのか
ではなぜ右肘静脈で確保するか。
先ず動脈でなく静脈を選ぶ理由ですが、動脈は刺す候補が無いですし、止血が滅茶苦茶大変です。
循環動態を考えれば、やる意味がないですね。それをやるのはカテーテル検査です。見たいところまでカテを持って行き造影する瞬間を撮れるのなら、意義があります。
余談ですが、CTとカテーテル検査が同部屋でできるHybridな検査室も世の中には存在します。
次に肘静脈が選択される理由です。
健康診断などの採血にて、皆さんはどこの血管から採血されますか?
おそらく皆さん、肘から採血をしてもらうと思います。
つまり、メインでルートを確保する看護師の方も慣れていますよね。
と、書きましたが、理解しなければいけないポイントは別にあります。
一番の理由は、肘静脈が比較的見やすく、太い静脈であり、皮膚も柔らかく刺しやすいためです。
そして、蛇行や分岐が少ないことも重要です。
血管が真っ直ぐなものと蛇行しているものであれば、真っ直ぐな方が造影剤が通りやすいですよね?
分岐が多ければ逆流の可能性も高くなりますよね。
設定した造影剤の量とレートが崩れないような場所で造影したい、というのが我々の考えにあります。
右と左の血管ですが、
- 心臓までの距離
- 頸静脈への逆流の可能性
- 左腕頭静脈へのうっ滞の可能性
から右を選択します。
距離が短い方が力(注入レート)が伝わりやすいですし、逆流は造影検査失敗を招きかねません。造影剤がうっ滞すれば大きなアーチファクトとなります。
乳癌患者は患側と反対側で確保
例えば、右乳癌術後の患者さんであれば、左を選択します。
外科的手術を行っている場合はリンパ郭清(リンパ節切除)をすることがあり、基本的に患側ではルートを取りません。
リンパ郭清をすると感染に対する抵抗力が下がるため、穿刺部位からの感染を起こしやすくなります。また、感染を繰り返すと、リンパ浮腫につながる可能性もあります。
乳癌術後のフォローアップが目的で造影CTを撮りに来ている患者さんもいれば、そうでない目的で来ている方もいます。
つまり、既往歴はとても大事ということです。
見たい部位に応じて左右を決める
基本的に右肘でルートを確保しますが、右上肢のCTAや、鎖骨下動脈を見たい検査などは左側で確保します。
見たい部位をよく考えないと、適切な画像は提出できません。
上肢の挙上可否もポイントの一つです。
透析中患者はシャントを形成していない側で確保
透析(HD)中患者はシャントといって、透析をする際に用いる血管があります。
シャントというと短絡路という意味に変換される方が多いと思いますが、動脈と静脈をつなぎ合わせたものです。
ルート確保には駆血帯を使用しますが、駆血帯による腕の圧迫は、シャントに負担をかけると言われています。
また、造影剤の流れも通常とは異なってしまうため、撮像タイミングのズレや造影剤量の不足等が生じる恐れがあります。
シャントについては以下のページが分かりやすかったです。
透析患者でも意外に知らないシャントの種類~自己血管と人工血管~
取れない人は手背や足背になることも
肘静脈が見つからない人も世の中には存在します。そういった場合は手背でルートを確保することがあります。
病棟患者さんの場合、足背にてルート確保をすることもあります。
足からの距離を考えて造影条件を考える必要が出てきます。
当然、肘静脈よりも細い血管であるため、血管外漏出を起こす可能性を十分に考慮する必要があります。