日本人の死因順位における第2位は心疾患です。
実際病院で働いていても、心疾患の患者さんは多く来ます。
今回は心臓疾患を中心に、循環器内科領域の略語を紹介します。
AMI
Acute Myocardial Infarctionの略で、急性心筋梗塞を意味します。
心電図を見ると、多くのAMIでは所見が出ます。
例えば、主訴が胸痛、心電図を見たら「Ⅱ、Ⅲ、aVFでST上昇」となると、右冠動脈閉塞による下壁梗塞を疑います。
心電図所見には経時的変化があるので、興味のある方やカテ室配属になる方は調べてみてください。
↓以下のサイトに、比較的分かりやすく書いてありました。
(スライドのPDFなのでザックリ見るなら)
モーニングレクチャー 心電図
AMIは当直中にしばしば来ます。カテ室入室まで結構慌ただしいです。
ER頻出用語なので、早めに抑えておくと良いです。
心筋梗塞は、病理学的には高度の虚血による心筋組織の不可逆的心筋壊死と定義されている。特に発症後1~2ヵ月以内のものを急性心筋梗塞と呼ぶ。
AP
Angina Pectorisの略で、狭心症を意味します。
病態については以下の文章が分かりやすかったので引用します。
冠動脈が高度に狭くなると血液の流れが妨げられ、狭いところより先の心筋へは血液が不足してしまいます。このような状態が起こると、狭心症という症状が出現してきます。狭心症には、前胸部や肩、心窩部(胃のあたり)が締め付けられるといったような症状や上腕、あごがしびれるといったような症状が出ることもあります。この症状は、歩行などの動いているとき(安静時に比べ心臓が頑張って全身へ血液を送りださなければならない)に起こることが多いです。この状態ではまだ心筋は生きていることが多いので、この時点で治療をすれば、心筋のダメージを最小限に抑えることが出来ます。
狭心症は主に、労作性狭心症と不安定狭心症の2種類に分類されます。こちらも分かりやすそうな文章を引用しましたので、余裕のある方は改めて抑えておくと良いでしょう。
労作性狭心症
仕事をしたり、激しい運動をしたときに起こるものを労作性狭心症といいます。冠動脈の動脈硬化によって血流が悪くなっているため、運動などで負荷がかかると十分な酸素を心臓に運ぶことができなくなり、胸痛が生じます。痛みは多くの場合数分から数十分でおさまり、またニトログリセリンという薬を使うと痛みはすぐによくなります。
不安定狭心症
冠動脈が完全に詰まってしまうと、心臓の筋肉に栄養が運ばれず、その部分の筋肉は壊死してしまいます。この病気のことを心筋梗塞といいます。狭心症の中には、発症から急速に心筋梗塞に移行しやすいケースがあり、それらは特に不安定狭心症と呼ばれています。
発作の回数が増えた時、発作の持続時間が長くなったとき、また労作(力仕事や激しい運動)で起こっていた狭心症が、安静時にも起こる場合等は不安定狭心症が疑われます。至急、医師の診察を受けることが必要になります。初めて狭心症の発作が起こった場合は、1~2回の発作後に心筋梗塞に移行することもあり、この場合も不安定狭心症に分類されます。
冠動脈CTとの関係
冠動脈CTを撮って画像処理をする際には、狭窄箇所の有無をしっかりチェックする必要があります。
(もちろん診断するのは技師ではなく医師)
多くの施設でCPRを提出していると思いますが、技師の処理によって見え方が変わってしまう部分でもあるので注意しなければいけません。
撮影中の予期せぬ心拍数や心電図変動が起きた場合、冠動脈の静止位相を探すのが困難になることがあります。息止め不良が起こる場合もあります。息を止めていても心臓は動きますが、止めていれば横隔膜の動きは抑制できるため、息止め不良は心臓の位置へ影響を及ぼします。
偽病変を作らないためにも、何かあった際は医師へ伝える必要があると考えています。
ACS
Acute Coronary Syndromeの略で、急性冠症候群を意味します。
先にAMIとCPを紹介しましたが、ACSは不安定狭心症や急性心筋梗塞などをまとめたものです。
急性冠症候群は冠動脈の急性閉塞により引き起こされる。その結果は閉塞の程度と位置によって異なり,不安定狭心症から非ST上昇型心筋梗塞(NSTEMI),ST上昇型心筋梗塞(STEMI),さらには心臓突然死に至るまで様々である。
ちなみにSTEMI(ステミ)はST Elevation Myocardial Infarctionの略、NSTEMI(ノンステミ)はNon ST Elevation Myocardial Infarctionの略です。
STは心電図の一部分を表しています。
AS
Aortic Stenosisの略で、大動脈弁狭窄症を意味します。
大動脈弁は左室から上行大動脈にかけてある弁です。
ASは大動脈弁の狭窄によって、左室から上行大動脈への血流を妨げてしまいます。なので、狭窄した弁を置換したり、弁を広げたりする治療を行います。
症状の度合いや年齢に応じて、大動脈弁置換術やTAVIを行います。
TAVI
Transcatheter Aortic Valve Implantationの略で、経カテーテル大動脈弁植込術を意味します。
文字通りTAVIは開胸を必要としない術式ですので、80歳以上の高齢者の方などで行われています。
TAVI術前CTの”計測”が非常に重要となるわけですが、これについては別の記事にて解説します。
PE・DVT
PE
Pulmonary Embolismの略で、肺血栓塞栓症を意味します。
下肢などの静脈内で血液が凝固することにより生じた血栓が、肺動脈に詰まる病気です。血栓は主に、血液の流れに乗って肺に達します。
実際の症例画像を引用し示します。肺動脈優位相の画像です。血栓は、肺動脈内に明瞭な欠損像として認められます。
DVT
Deep Venous Thrombosisの略で、深部静脈血栓症を意味します。
上述の下肢などに生じる血栓が、これに当たります。血流のうっ滞や血管内皮細胞障害が原因となり、下肢の静脈で血栓を生じる病気です。大腿部や腓腹部に生じやすいと言われています。具体的な原因には、外科的手術や長期臥床などが挙げられます。
実際の症例画像を引用し示します。下肢静脈優位相の画像です。こちらでも、血栓は欠損像として認められます。