僕は放射線技師になってからMRを撮ったことがありません。
もちろんCTの画像処理を行う際など、MRの画像はきちんと見るのですが…
学生時代に勉強したこともすっかり抜けていると思います。
これからMRを学ぶ方、僕と一緒に勉強しましょう!(笑)
Part1はMRにとって欠かせないT1緩和時間とT2緩和時間についてです。
※間違っている部分などありましたら、随時教えていただけると幸いです。
MRIとは
MRI検査は強力な磁石でできた筒の中に入り、磁気の力を利用して体の臓器や血管を撮影する検査です。
成人の人体は、約60~70%が水分で構成されています。つまり、身体の中には水素原子(以下プロトン)が豊富に存在しています。
プロトンは陽子であり、自転しています。こいつ自体、磁気モーメント(磁石の強さと向きを表すベクトル量)を持っています。
歳差運動という回転をしており、みそすり運動をしています。
(中心を軸として回転し、かつ軸の傾きもまた回転運動をしている状態)
MRIは強力な磁場を用いて、このプロトンたちの磁化をいじり、画像を作ります。
いわばプロトンの核磁化分布です。
核磁気共鳴現象について
プロトンは通常、ランダムな方向を向いています。
ランダムな方向を向いている場合、磁気モーメントが打ち消し合い、磁化ベクトルは0となります。
プロトンは、静磁場という強い磁場にさらされると、ランダムな向きが静磁場と並行の向きになります。
静磁場と同方向および逆方向に分かれますが、
同方向のプロトンがわずかに多くなり、
体内に磁化を生じます。
これを巨視的な磁化ベクトルといいます。
巨視的な磁化ベクトルも歳差運動をしています。しかし、それを形成しているプロトンの位相はバラバラです。位相とは、ある瞬間における歳差運動の回転位置を示します。
歳差運動の回転数は周波数で表されます。この周波数と同じ周波数の電波を照射すると、プロトンにエネルギーが伝わります。
MRでは、RFパルスという電波を用います。RFパルスを当てると、位相が揃います。これがいわゆる、核磁気共鳴現象です。
磁気共鳴が起きると、横磁化成分が生じます。そして、わずかに多かった同方向のプロトンが減り、静磁場と同方向のプロトン、反対方向のプロトンの数が等しくなります。これにより、縦磁化成分が消失します。
T1緩和、T2緩和とは
RFパルスの照射を切ると、縦磁化成分が回復し、横磁化成分が減衰します。
- T1緩和:縦磁化成分の回復
- T2緩和:横磁化成分の減衰
組織によって、これらの緩和時間は異なります。
T1値とは…
RFパルスによって0になった磁化が、最初の磁化の約63.2%の大きさに回復するまでの時間
T2値とは…
RFパルスによって生じた横磁化成分が、約37%の大きさまで減衰する時間
T1緩和、T2緩和のメカニズム
T1緩和とT2緩和は、同時に、かつ独立して起こっています。
(T1はのんびり、T2は早い、みたいな感じ)
それぞれについて説明します。
T1緩和はスピンー格子相互作用
T1緩和は、RFパルスから受け取ったエネルギーを周囲の格子に与えて、熱平衡状態(もとの状態)に戻る過程です。
これは分子の運動周波数に依存しているため、組織の物理状態に依存します。
(物理状態が固体に近いと、分子は動きづらい→運動が遅いといったイメージ)
脂肪や粘液のとき、T1値は低くなります。
T2緩和はスピンースピン相互作用
スピンスピンと聞くと、かつてのセンター試験国語を思い出しますね。
「シイゼエボオイ・エンドゼエガアル」
「スピンアトップ・スピンアトップ・スピンスピンスピン……回れよ独楽よ、回れよ回れ。」
「フェーヤー?フェーヤー……チョッ!幾度聞いても駄目だ、直ぐに忘れる。」これらは2013年のセンター試験(国語)に出題された、大正時代の小説「地球儀」で出てきた謎の文である。
T2緩和は、水分子の回転によって磁場の不均一が生じ、それぞれの位相がズレていく過程です。
T1緩和と同様、組織の物理状態に依存しますが、依存特性は異なります。
(自由水に近くなるほど、T2は長くなる)
実は減衰する要因がもう一つ
外部磁場の不均一によってもT2緩和が起きます。外部磁場には静磁場の不均一性と、磁化率の差による不均一性があります。
例
ヘモジデリンによる出血病変と脳実質は、磁性が違うため、磁化率に差が生じます。その分、T2*が短縮し、出血病変の信号が低下し、黒く見えます。
おわりに
今回はT1緩和とT2緩和について書きました。
僕はMRのスペシャリストではないので、質問が来ても答えられないと思います。質問が来たら、Twitterのフォロワーの中にいるスペシャリストに確認してみようと思います(笑)