今回も肝細胞癌の記事です。前回は肝細胞癌が何か、ざっと書きました。
今回はもう少し臨床に沿った、実践に役立ちそうな知識をまとめていきます。
肝細胞癌の診断に用いる検査
大きく分けると、3つに分けられます。
画像検査 | 超音波・CT・MR・血管造影 |
血液検査 | 腫瘍マーカーによる判別(PIVKA-Ⅱなど) |
組織検査 | 肝腫瘍生検 |
放射線技師が関わるのは画像検査の部分ですね。
第一選択となる検査は、非侵襲的かつ比較的簡便な超音波(エコー)です。
そして造影CTまたはMRを撮るというのが主流です。
造影剤を用いたダイナミックCT
検査時間は10分ほどですが、情報量が多いという点で、CTはとても有用な検査です。
解像度が高いため、術前に血管の走行を追うことができます。
最近は、切除術前に、動脈・門脈・静脈をそれぞれ分離したVR画像を求める医師もいます。肝臓や腫瘍の体積も計算することができます。
また、平衡相にて胸部から骨盤の範囲を撮像すれば、肺・リンパ節・骨転移の検索が可能となります。
血管造影で大きな役割を果たすCBCT
CBCT(Cone Beam CT)は、血管造影撮影装置に搭載されているFPDを回転させながら撮影することにより、CT様画像を取得する方法です。
CBCTには安価・小スペース・移動時間の短縮などの長所があります。しかし、分解能が低い・再構成に時間がかかるなどの短所もあります。
TACE前のCBCTで確認したい項目
TACE(Transcatheter Arterial Chemoembolization:肝動脈化学塞栓療法)前にCBCTを撮ります。ここで確認したいことをまとめます。
・CTA(CT during Arteriography:動脈造影下CT)
腫瘍濃染、血管走行、栄養血管の同定。腫瘍に関与しない血管があれば、その部分を避けることができる。
・CTAP(CT during Arterial Portography:門脈造影下CT)
CTAの濃染部がwash outするかどうか、門脈塞栓の有無など。
典型的肝細胞癌像とは
造影CTやMRを撮った際に、典型的肝細胞癌像があれば、肝細胞癌と診断を確定することができます。
では、典型的肝細胞癌像とはなんでしょうか。
肝細胞癌は、造影剤急速注入によるダイナミック撮像により、動脈相で濃染します。
そして、門脈相・平衡相にて周囲肝組織より低濃度となります。(このように造影剤が抜けていくことをwash outと呼んでいます。)
肝細胞に造影剤の取り込まれた肝特異的な時相(肝細胞造影相)では,肝細胞機能の消失 あるいは低下した病巣部と正常肝実質との間に造影剤の分布差が生じることで,病巣を検出することが可能となります。
ただし、高分化型肝細胞癌は動脈血流が少ないため、動脈相で早期濃染が認められないことがあります。
なので、「早期濃染しない=肝細胞癌ではない」というわけではありません。
肝細胞癌を探すポイント
- 動脈相にて白く染まっている部分を探す。
- 動脈相と平衡相を見比べ、平衡相の欠損像(wash outしている部分)を探す。
- 平衡相の欠損部分が動脈相にて染まっているか確認する。