腹部レントゲンは、胸部レントゲンと比較すると、パッと見たときの情報は少ないと思います。この記事では、何故腹部レントゲンを撮影するかについて、おさらいします。
消化管(異常)ガスの確認
消化管内にはガスが存在します。
腹部レントゲンでは、特に腸管内のガス像を見ます。ガス像の大きさや、どこに存在しているかを、注意して見た方がいいです。
フリーエアーについて
どこに存在しているかが何故大事かというと、消化管外だったときが危険だからです。
これはフリーエアー(腹腔内遊離ガス)といい、消化管穿孔の可能性があります。
急性腹症で消化管穿孔が疑われる場合は、積極的に見ましょう。
ただし、外科的手術の後は、腹腔内に空気が入っていることがあります。外科的手術をしてから直ぐのレントゲンでフリーエアーを発見した場合は、慌てずに確認しましょう。
二ボー(鏡面像)について
二ボーはイレウス患者の腹部レントゲン(立位)にて観察できます。
イレウスを発症すると、腸液が貯まります。この腸管内に貯留した腸液と、腸管内ガスが液面を形成することで二ボーが見られます。
腹水について
腹水は、腹部(胃や腸を包む腹腔)に体液が異常に蓄積すること、またはその体液を表します。
腹部の少量の液体であれば、通常症状を起こしませんが、液体の量が増えるにつれて、腹部が膨らみ、皮膚が腹部を横切って伸びてきて、臍(へそ)が平らになったり、押し出されたりします。これは腹水によって胃や肺に圧力がかかるためで、さらに他の症状を引き起こす可能性があります。
腹水は量が増えると様々な症状を引き起こします。肝臓疾患系に多いものですが、貯留具合は見ておいた方が良いでしょう。多く貯留していれば、その分腹部膨満感も増しています。
肝臓、脾臓、腎臓など腹腔内臓器の形態
腹腔内臓器が、解剖学的位置や大きさと大きく異なっていることがあります。
例えば、肝臓が物凄く肥大している場合、そこには腫瘤があるかもしれません。
(こういった場合は、エコーやCT、MRIと比較することが多いと思います)
子宮や卵巣なども、腫大が起こりうる臓器です。
結石や石灰化の有無
結石は主に胆石・腎結石・尿路結石などのことを指します。
ただし、結石の成分によっては、X線透過性が高く、レントゲンでは見えづらい(見えない)こともあります。
骨格の観察
腹部レントゲンとはいえ、そこには腰椎や骨盤部の骨などが写ります。
椎体などの側弯があれば情報として写ってきますし、前立腺癌の骨メタ(骨形成性)なども見ることができます。
メタに関しては、ある画像と無い画像を見比べてみると分かりやすいと思います。
余談
CTのスカウト像でも、メタが進行している場合は、画像に現れることがあります。
その段階で、骨条件を追加する、という判断をすることもできます。
チューブ・クリップ類の位置確認
イレウス管やドレナージチューブ、内視鏡時のクリップなどは腹部レントゲンに写ってきます。
胃管挿入後の位置確認で撮影することも多いです。この場合は位置が浅すぎないか、気管でなく食道を通過しているかなど確認します。気管支への誤挿入も可能性としてはあります。 食道気管支瘻になってしまっては大変です。
CGM・FGMには注意!
CGMとはContinuous Glucose Monitoringの略、FGMとはFlash Glucose Monitoringの略です。
簡単に述べると、どちらも持続型血糖測定器です。
これらはX線照射禁ですので、撮影前に確認することをオススメします。
詳しくはこちらを参照してください。
CGM、FGM:日本IDDMネットワーク
おわりに
腹部レントゲンは救急外来でも比較的撮ることが多いです。
少しでも不安な方は、ぜひ復習してみてください。
立位:フリーエアーや、気体液面状態の観察
臥位:腹厚が均一になりやすく、コントラストが得やすい