近年、皆さんの街にも接骨院が急増していることでしょう。
何故こんなに増えているか疑問ではないですか?
各種保険適用と書いてありますが、「保険を使えるということは病院なのでは?」と思われる方もいらっしゃる可能性があります。
今回はそんな接骨院について、詳しく調べてみました。
※この記事は決して接骨院を否定する記事ではありません。
接骨院とは
そもそも接骨院とはどういう場所なのでしょうか?
接骨院(せっこついん)とは、厚生労働省が定める施術所のうち、柔道整復師が日本の伝統医学の1つである柔道整復術を行う施設。各種法令では「柔道整復の施術所」と表現されるが、一般には「接骨院」と呼ばれることが多い。俗に整骨院、ほねつぎとも呼ばれる。
接骨院 出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
柔道整復術(じゅうどうせいふくじゅつ)とは、柔術に含まれる活法の技術を応用して、骨・関節・筋・腱・靭帯などの原因によって発生する骨折・脱臼・捻挫・挫傷・打撲などの損傷に対し手術をしない「非観血的療法」という独特の手技によって整復や固定を行い人間の持つ自然治癒能力を最大限に発揮させる[要出典]治療術。日本独自の治療技術である。
柔道整復師とは
柔道整復師というのは、国家資格の一つです。
昔から「ほねつぎ」「接骨師」として広く知られ、現在は高校卒業後、都道府県知事が指定した専門の養成施設(三年間以上修学)か文部科学省が指定した四年制大学で解剖学、生理学、運動学、病理学、衛生学、公衆衛生学などの基礎系科目と柔道整復理論、柔道整復実技、関係法規、外科学、リハビリテーション学などの臨床系専門科目を履修します。
国家試験を受け、合格すると厚生労働大臣免許の柔道整復師となります。
資格取得後は、実務経験と研修の受講により受領委任の取扱いが行える「接骨院」や「整骨院」という施術所を開業できます。また、勤務柔道整復師として病院や接骨院などで働くこともできます。
この「養成学校」と「開業」がポイントです。
養成学校と開業について
先ず養成学校ですが、国公立大学が一校もありません。
そして入学難易度もそこまで高くありません。大学ですら、です。
決して馬鹿にしているわけではありませんが、そういうことなんです。
また、柔道整復師は今、増加しています。
令和元年9月4日、厚生労働省から『平成30年衛生行政報告例(就業医療関係者)の概況』が発表された。
この発表によると平成30年末現在の就業柔道整復師は73,017人で、前回調査(平成28年末)に比べ4,897人(7.2%)増加した。都道府県別では、就業柔道整復師数は東京都が最も多く、11,105人となった。
また、柔道整復施術所数は50,077か所で、前回比で2,053か所(4.3%)増加していることが分かった。
柔道整復師が増加→開業するので施術所(接骨院など)も増加、という流れです。
これらが近年、接骨院が増加している原因です。
客の取り合い、そして収益を上げたい、そういった気持ちが高まっているのではないでしょうか。
骨盤矯正などという医学的に意味不明な言葉が流行っているのも、そうした背景でしょう。
接骨院の不正請求問題等もあります。スタッフ同士でお互いの施術をするなんてこともあるようです。不正な保険適用は医療費圧迫の原因になります…
整形外科との違い
両者の違いについては、日本整形外科学会が声明を出しています。
Q 整形外科と整骨院(接骨院)
――「整体」なども整形外科の一分野なのでしょうか?A 整形外科では医師(整形外科医)が骨・関節・筋腱(運動器)・手足の神経(末梢神経)・脊椎脊髄の治療を行います。診察による理学所見とX線(レントゲン)やMRI等の検査をもとに診断し、症状や病態にあわせて投薬、注射、手術、リハビリテーション等で治療します。
整骨院(接骨院)では柔道整復師が捻挫や打撲に冷罨法、温罨法、マッサージや物理療法等の施術を行います。柔道整復師は医師ではなく、あん摩・マッサージ、はり・灸師と同じ医業類似行為の資格です。外傷による捻挫や打撲に対する施術と骨折・脱臼の応急処置が業務範囲で、変形性関節症や五十肩のような慢性疾患は取り扱えません。
整(接)骨院に健康保険を使って外傷以外の疾患で通うことは違法です。
また、2001年に書かれた記事ですが、分かりやすくまとめてある記事を見つけたので、リンクを貼っておきます。
怪我をしたら絶対に整形外科を受診すべき理由
通常、接骨院に医師はおりません。
そして、画像検査をするための設備も整っておりません。
業務内容に「骨折・脱臼の応急処置」と書いてありますが、どうやって判断するのでしょうか?
放射線技師として働く僕にしてみれば、正直意味が分からないですね。
(どうやら整復師診断書というものがあるようです…)
実際、怪我をして接骨院に行った結果、治らなかったり悪化したりという事例もあります。
というわけで、怪我をしたら絶対に整形外科を受診しましょう。
整形外科医は、国家試験合格後さらに6年間研修し、専門医試験に合格してはじめて整形外科専門医として認定されます。また、その後も資格継続の研修が行われます。
それに対して柔道整復師は、3年間の専門学校を出て、国家試験に合格すれば直ちに独立して施術所を開設できます。こういった事実から、社団法人日本整形外科学会では、
「柔道整復師が諸検査やそれらを利用して診断したりすることはできない。正しい診断なしに続けられる施術が返って病気を悪くしたり、生命の危険を招いたりする可能性がある。」
と指摘しています。
接骨院・整骨院・整体で悪化した症例
ある整骨院にて、肩関節における”石灰性腱炎”を”亜脱臼”と判断し(もちろんレントゲンは撮れません)整復をした結果、肩関節痛が悪化したそうです。
先日、ある患者が肩関節痛で整骨院へ行き、亜脱臼なので整復すると二人がかりで腕を引っ張られ、痛みが悪化し激痛になり、当院に受診されました。亜脱臼とは脱臼ではないので整復する必要はありません。しかも、この患者は亜脱臼でもありませんでした。
この患者は肩関節周囲に石灰が沈着する、肩関節石灰沈着症という疾患です。治療は消炎鎮痛薬やステロイドの患部への注射になります。
接骨院の闇とは
日本接骨師会のHPを見て驚いたこと
先ずはこちらをご覧ください。
従来、柔道整復師社会では「診断」及び「診断書」などの医療用語の使用が医師法違反になるとして不可とされていました。実際の整復師業務は医業・医療であり、この中に診断は不可欠の要件であり、これを否定することは整復師業務自体の否定となります。これは矛盾です。だが、なぜ、このような矛盾が行なわれ、また、それを是認していたのかという問題です。こうした矛盾の原因もそしてこれを是認した理由もいずれもその根本は資格と制度の理解を誤り、その誤りを強行した者と誤りを正そうとしなかった者の誤りです。
ある程度大きな団体にも関わらず、「整復師業務は医療である」という旨を書いています。
診断には根拠が必要です。医師は想像できないほど多くの分野を勉強して医師となっています。果たしてそんなことが柔道整復師にできるのでしょうか…
また、以前話題になったレントゲンの実施判断および撮影をできるようにしようという主張も紹介します。
昨年6月の第193回国会に、日本維新の会より「柔道整復師法一部改正案」を国会に提出して頂きましたが(「柔道整復師法の一部を改正する法律案を提出」参照)、本国会(第197回国会)にも改めて提出をして頂きました。法案提出にあたり、ご理解いただいた国会議員、各地元でご尽力された柔道整復師の先生方には感謝とお礼を申し上げます。
また、本法案提出に、多大なご尽力を賜った、沖縄県選出の衆議院 下地 幹郎議員の国政報告会では、「接骨院にはレントゲンが必要なので方案を提出しました。」と患者、国民にとって接骨院でのレントゲン検査の必要性、有益性を一般の出席者の方々に対して訴えて頂いたとの報告がありました。
僕の感想としては、
「接骨院にはレントゲンが必要なので…」→???
といったところです。
診断も治療もできないのに、必要性とは一体…。
―― 業の問題ですが、小泉内閣の一連の規制緩和の中にさらに柔整の範囲を拡大しようとした動きもありました。
たとえば柔整師にレントゲン撮影と診断を許そうなどと提示し、一応厚生労働省は反対しましたが、今後の政治的背景によっては特区での実施もあるともいわれているがどうでしょう。大井 人体にさまざまな影響をおよぼすエックス線照射にかかわる業務は、専門教育と知識、技能、資格を必要とします。エックス線診断は医師、歯科医師のみなすべき行為で、柔道整復師に撮影、診断業務を認めることは適当ではないでしょう。
専門学校での3年間の教育カリキュラムに放射線業務や放射線障害の教育にかかわるものはありません。放射線障害の恐ろしさはもっと強調されてしかるべきです。医療というのは、医者のためでも事業家のためにあるものでもなく、患者のためにあるのですから。整形外科医や放射線医はその専門家になるために、少なくても数万枚のエックス線フイルムを読影する修行を積み、疾患の診断を読影できるようになります。必ずしも診断がやさしいものばかりではないのです。
医師、放射線技師以外に自分たち(柔整師)でとるのはやめて、やはり医師に紹介すればよいのだと思いますね。
接骨院のHPを見て思ったこと
あるHPでは、接骨院と整形外科どちらに行けばよいか、について書いてありました。
そこには
- レントゲン、MRIなどは撮らなくていい
- 交通事故の治療をしっかり行いたい
- 手術したくない
といった場合は接骨院に来た方がいいと書いてありました。
ここでも僕の頭の中は「???」です。
レントゲンやMRIを撮るかどうか決めるのは医師ですし、手術をするかどうかも先ずは精査をしたうえで医師との検討が必要でしょう。
交通事故の治療も同じような感じです。
交通事故の場合はレントゲンでハッキリわからないような頚椎のズレや骨盤のゆがみが生じる可能性があるとも書いてありました。もうツッコミきれないですね。
HPには画像の無断転載も
一部のHPでは、画像の引用元を書かず、無断転載を行っています。
接骨院は数が増えすぎていて、客の取り合いになっていると考えます。そのため、各接骨院は少しでもHPのアクセス数を増やそうと躍起になり、SEOを意識して疾患に関する記事を書き始めたのでしょう。疾患に関する記事はやはり画像があった方が分かりやすいので、転載を行っているのだと思います。(僕も色々な所から画像を引用させてもらっています。)
中には参考書の中身を、写真に撮ってあげているHPもありました。
自分はこうならぬよう、気をつけたいと思います。
おわりに
冒頭でも書いたように、この記事は決して接骨院を否定する記事ではありません。
ですが、接骨院・柔道整復師について調べれば調べるほど、怪我をした際に接骨院へ行くのはやはり危険なのではと考えるようになりました。
特に、小児の整形外科領域における疾患の見逃しなんかは、後悔してもしきれない可能性があります。あの時接骨院ではなく整形外科に行っておけばよかった…なんてことが起きるのをなるべく防ぎたいです。
ただし、整形外科に行っても所見が見つからないことはあります。そういった場合に接骨院へ行くことを検討してみるのはアリかもしれません。