近年、AI(人工知能)の話題が盛り上がっています。正確には、深層学習の応用といったところでしょうか。
(この記事では分かりやすいようにAIと表記します。)
放射線技師の仕事も、AIが発達すれば無くなるのでは、と言われることがあります。
僕は無くならないと思いますので、その理由について述べたいと思います。
そもそも放射線技師の仕事は何か
放射線技師の仕事は一般撮影、CT、MRI、放射線治療、…
と様々です。
例えば一般撮影業務の流れは、
ポジショニング→照射野などの調整→撮影→再撮必要性の有無を判断
というのが主な流れです。
CTの流れは、
ポジショニング→スカウト撮影→スキャン範囲を設定し撮影→画像の確認
必要に応じて、画像の再構成
というのが主な流れです。
これらのように、患者さんと直接触れる場面から機械と向き合う場面まで様々な手順が織り込まれています。
私たちのメイン業務である撮影は、やはり人間が有利なのではと考えます。
放射線技師はAIを活用できる立場
よく役所や銀行の業務なんかはAIでできるという話を聞きます。
放射線技師の業務はAIに奪われる、というよりは、AIを活用できる立場だと考えます。
実際CTでは、逐次近似再構成応用法などがメーカーより出されており、臨床の場では実用されています。逐次近似再構成応用法に、深層学習を織り込む形です。逐次近似を使用することにより被ばく低減や画質向上が望めます。
画像処理なども、既に臓器や血管を抽出する機能があります。AIを織り込むことによって、ワンクリックで画像処理が完成する、という未来も近いのではないでしょうか。
そうすると、放射線技師の仕事は奪われるのではと思われる方もいるかと思います。
機械は完璧ではありません。
それは人間の身体というのは十人十色で、全く同じ構造・病状の人はいないからです。画像処理をワンクリックで作成できたとしても、診断に有用であるかは、やはり人間である放射線技師の仕事だと考えます。画像処理にかかる時間が大幅に削減され、診断に有用な画像を提供できるのではないでしょうか。
その分、勉強も必要になってきますが、便利な世の中になると嬉しいですね。
ニュースと交えて実用例を紹介
定型作業を自動化するRPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)を取り入れる動きも進む。
東京歯科大学市川総合病院(千葉県市川市)はRPAテクノロジーズ(東京・港)のシステムを導入。造影剤を使ってコンピューター断層撮影装置(CT)検査などを受ける患者の腎機能の検査結果を自動的に確認するRPAを使う。腎機能に異常があると造影剤の使用に注意が必要なためだ。
本来、主治医が患者の腎機能に異常がないかを確認したうえでCT検査などを依頼するのが原則だが、チェック漏れの恐れもあるため、検査を担当する診療放射線技師もダブルチェックしてきた。現在は患者の腎機能検査の結果をシステムが自動抽出し、チェック漏れを防げるようになった。
診療放射線技師の嶋田佳世子氏は「これまではダブルチェックのために1日約30人分の電子カルテを確認する必要があったが、大幅に作業を削減できた。人間によるチェックミスのリスクも解消された」と話す。
造影CTは確認することが多く、造影剤を使用することのリスクもあります。
腎機能障害のある患者に対し造影剤を使用すると、造影剤腎障(CIN)を引き起こす可能性があります。
人間によるチェックはしなければいけませんが、このように機械がサポートしてくれれば、技師の負担は減りますし、チェックミスも減るということが分かりますね。