病棟へポータブル撮影をしに行って、苦労したことはありますか?
僕はあります(笑)
慣れればポータブル撮影は大したことはありませんが、慣れるまで大変な人は大変だと思います。どのように攻略したか、伝えられるコツを紹介します。
病棟ポータブル撮影の手順を簡単に解説|胸部レントゲンVer.
病棟ポータブル撮影の手順を簡単に解説|腹部レントゲンVer.
看護師さんに声をかける
いち早く、介助についてくれる看護師さんを探す
まず病棟に行ったら、ナースステーションに声をかけましょう。
声をかけるときは元気よく大きな声で挨拶してください。自身のなさそうな人や声が小さい人は印象が悪くなります。あと、平気で無視されるので大きい声を出しておいて損はないです。
朝であれば、「おはようございます!○○さんのポータブル撮影に来ました!」でいいと思います。あの大きな機械を持ってきて、声までかけて無視をする人はそうそういないはずです。気づいてないフリはできないでしょう。
ただし、声をかけなくていい病棟もあるので、先輩に確認してください。その場合は、担当している看護師さんに直接声をかけましょう。
重症患者を受け入れている病棟(挿管中でバイタルが不安定な患者など)は、患者1人に対し看護師が1人ついていることもあります。
患者確認は絶対
ポータブル撮影を始める前に、必ず患者確認をしてください。患者確認は、担当してもらう看護師の方とダブルチェックをしましょう。
患者さんが発声可能なら名乗ってもらいます。無理ならネームバンドを確認します。
看護師の勤務形態を知る
放射線技師と看護師の勤務形態は違うことがあります。
放射線技師が2交代制でも、看護師は3交代制なんてことがあります。
何を言いたいかというと、その時間帯の勤務者でない人がナースステーションにいるということです。
例えば朝ポータブルを撮りに行って、声をかけた人が夜勤明けの人だったとしましょう。夜勤明けの看護師さんは基本的に、「私もう勤務時間じゃないんで」という感じで完全に無視をしてきます(笑)
せめて明けだと一言言ってくれるか、明けだと分かるように帽子被るとかしてほしいです…
まあ傍から見たらさっぱり区別つかないので、声をかけて無視されたら、「夜勤の方ですか?」とか、「日勤帯の方っていますか?」とか、事情を知っているうえで声をかけてますアピールでいきましょう。
意識が無くても接遇は同じ
「この人意識なさそうだから声かけなくていいや」ではなく、挨拶はきちんとしましょう。
意識がなさそうに見えて意識がある人はいくらでもいますし、たとえ意識が無かったとしても目と違って耳は常に聞こえる状態なわけです。
スペースを作る
ポータブルの肝は装置を置く場所
介助についてくれる看護師さんを見つけたら、次はスペースを作りましょう。
病室って結構狭かったりするんですよね。あれだけ大きく動かしづらい装置を病室に入れるにはスペースが必要です。
まずは患者さんの周りを見て、この幅なら装置が入るかな、という確認をしましょう。もし入らなそうなら、ベッドサイドテーブルをどかしたり、テレビをどかしたり、ベッドの足側を振ったり…
そして、ポータブル装置を置く場所は、支柱を意識してください。
置く位置をミスすると詰みます(笑)
胸腹部臥位で撮影するときは、支柱が患者さんの大転子レベルに来ると動かしやすいです。
胸部坐位で撮影するときは、装置本体を臥位のときよりも少し離し、管球がベッド足側の柵に来るようにします。
(これでSIDがおおよそ120cmになります。)
ポータブル装置を寄せる前にベッド柵を降ろす
ポータブル装置を寄せてからベッド柵を降ろすのは物理的に難しいというのと、安全面の観点から、寄せる前に柵を降ろしましょう。
柵を降ろしておかないと、患者さんを持ち上げるときに邪魔になったり、ポータブルの支柱が当たってしまいます。
患者さんに何がついている?
ポータブルを撮る患者さんのほとんどは、何かついています。
それは、酸素チューブであったり、胃管であったり、点滴であったりします。
スペースを確認する際、患者さんに何がついているか、全体を見渡して確認しておきましょう。これらで最も気をつけなければいけないのは、ルート類などの抜去や、装置接触などです。
胸腔ドレーンはたまに、ベッドサイドにかけられず床に固定されていることもあるので十分気をつけましょう。
下の記事を参考にしていただければと思います。
重症患者は挿管していることが多い
集中治療室(ICU)などに入院している重症患者は挿管していることが多いです。
挿管チューブは気道を確保しているものなので、絶対に抜いたり位置を変えてしまうことは避けたいです。
FPD(またはCR)を入れる際は、必ず蛇管が向いていない方向から入れましょう。
また、蛇管はなるべく避けてもらいましょう。やはり胸部レントゲンにはやや写ってきますので。必ず看護師さんにやってもらってください。タオルなどを蛇管の下に入れて高さを出すと、影が頭側に逸れるのでいいです。
持ち上げるときは重心を意識する
寝ている人間の重心ってどこにあると思いますか?
褥瘡になりやすい箇所が重心の場所です。
褥瘡の好発部位は、以下のとおりである。
上図の仰臥位に着目すると、胸部を撮るときは肩甲骨部、腹部を撮るときは仙骨部を意識した方がいいと考えられます。
ただし、腹部の撮影時は、仙骨部がFPDの下方にきますので、そこだけを意識してしまうと上方が入らないときがあります。体型によって力を入れる場所のバランス調整が必要ですが、経験則に基づくので慣れるしかありません。
持ち上げる回数を2回に分けて位置を調整するのもいいです。
マーカーの位置を確認
半切サイズのFPD(またはCR)を使っていると、縦にしたり横にしたりしますので、マーカーの位置には気をつけましょう。もちろん左右間違いにも気をつける必要があります。
X線照射前は半径2m以内に人がいないか確認
我々は無駄な被ばくを避けなければいけません。
X線管から2m離れておけば問題ないとされていますので、確認しましょう。
撮影が終わったら一言添える
人としての礼儀といえば礼儀なのですが、撮影が終わったら患者さんだけでなく、協力してもらった看護師の方にもお礼を言いましょう。「ありがとうございました。」と一言声をかけるだけで印象がだいぶ違います。
そして一言添えると、「この人気遣ってくれてるなあ」と思ってもらえるワードがあります。
それは、「何か手伝えることありますか?」です!
これを言うと、「頭側に移動したいです。」とか「背中に枕入れたいです」とか、何かしてほしいことを言ってくれます。何もなければ「大丈夫でーす」と言われますが、相手の立場になったときに、気遣ってくれたら嬉しいですよね。
要するに、そういうことです。
また、動かしたものは必ずもとの位置に戻してから帰りましょう。片付けができない人はダサいです。
ポータブルは印象勝負なところもあるので、きっちり決めましょう。