普段から臨床に直結する話を書いていますが、たまには機器工学についても書こうと思います。
今回は実焦点や実効焦点について。ここら辺は国家試験にも出てくることがあります。
実焦点と実効焦点について
X線管内の陰極から飛び出した熱電子は、あらかじめ設定された陰極-陽極間の電圧(すなわち管電圧)に従って、急激に加速されながら細い線束として陽極ターゲットに衝突します。
この電子線束が、陽極表面に衝突した領域を正面から見たものを実焦点といいます。陽極から発生する制動X線は、ほとんどこの実焦点の領域から放射されると考えられています。
一方で、制動X線を効率よく被写体に照射するため、陽極の表面は基準軸に対してある角度で設置されています。これをターゲット角度といいます。
実焦点を下側から見上げたもの、つまり水平に投影したものを実効焦点といいます。
大焦点と小焦点について
実効焦点の大きさは、撮影された画像の鮮鋭度に影響を及ぼします。
すなわち、その大きさが小さいほうが、鮮鋭度の高いX線画像を撮影することができるということです。
しかし、焦点サイズの大きさが小さすぎると、陽極内に突入する電子線束の密度が高くなるため、陽極内での温度が上昇し発火の原因となります。
そこで、既存の臨床用X線発生装置では、設定されたmAs値に従って、その焦点サイズを自動的に変更するように設計されています。これらをそれぞれ大焦点・小焦点といいます。
つまり、自分の手で(マニュアルで)大焦点と小焦点を使い分ける必要はありません。
mAs値が一定のラインを超えた段階で勝手に大焦点になります。
(そうしないと、俗に言う管球が飛びます)
また、この温度上昇を軽減するために、陽極には固定陽極型と回転陽極型があります。
臨床装置では、一般に回転陽極型が採用されています。
焦点外X線について
陽極ターゲット面上の実焦点領域に衝突した高速の電子束によって二次電子が発生します。発生した二次電子が陽極から真空領域に勢いよく飛び出し、再び実焦点以外のターゲット面に突入した際に制動X線を生じます。この制動X線を焦点外X線といいます。
実際の臨床X線発生装置では、実焦点領域から発生する焦点X線に加え、焦点外X線が含まれるということになります。
焦点外X線は、X線写真に一様なかぶりを与えるため、コントラスト低下の原因となります。
焦点外X線が発生すると、画像のボケを増し、鮮鋭度を低下させます。
また、被写体に吸収されて被ばく線量が増します。
固定陽極に比べてターゲット面積の大きい回転陽極で多く発生し、全X線のうち約15~20%程度含まれると言われています。