以前からしばしば話題になっていた、放射線技師による静脈路確保について、話の進展があったようですので紹介します。
この話をするうえで欠かせない、医師の働き方改革推進についても触れていきます。
また、現段階での僕の見解も一緒に書きます。
働き方改革とは
「働き方改革」は、働く方々が個々の事情に応じた多様で柔軟な働き方を自分で「選択」できるようにするための改革です。
僕はてっきり、「業務効率化や不要な業務削減により、超過勤務を減らそうという動き」とばかり思っていましたが、全然違いました。
厚労省の考えは、上記のような改革だそうです。
職場は以前から自分で選んで入職していたわけですから、「働き方を選択する」という表現は個人的にピンと来ませんね。
おそらく、抽象化して書くことで幅広い意味を持たせているのでしょう。
医師の働き方改革推進について
病院で働いていると、医師の忙しさは凄く伝わってきます。
「この先生は一体いつ家に帰っているんだろう…」と思ったことも多々あります。朝も夜も土日も病院にいる…という先生は少なからずどこの施設でも見たことはあるのではないでしょうか。
医師の労働時間は極めて長い一方、応召義務の制度や労働と研修の区別の難しさなどがあり、また OJT3により学び続ける環境も必要とされる。しかし、自己犠牲と先の見えにくいキャリアを強いる現状の働き方の下では、質の高い人材が医療界を目指さなくなるおそれもある。
この辺の問題は正直、どの医療職にも当てはまりそうですね。もちろん労働時間は医師に及ばないでしょうが…
自己犠牲とまでは言わなくとも、業務以外の時間を使わない限り、仕事における成長(例えば放射線技師なら撮影技術など)はありえないでしょう。
話は少し逸れましたが、要は医師の長時間勤務を減らそうというのが、医師の働き方改革推進のようです。
この改革案にはザっと見たところ色々な策が書かれていました。今回紹介するタスク・シフトの話はその一環です。
タスク・シフト/シェアとは
タスク・シフティングとも言うようです。
調べてみると、このような定義づけがされています。
医行為の一部の他の職種への委譲
相変わらず難しく書いてありますが、「医師の業務の一部(医師免許が無くてもできるもの)を他の医療スタッフが行う、または行うことができるようにする」といった感じです。
(色々調べていると看護職間でもこういった動きがある模様…)
「シフト/シェア」と書かれているのは他職種へ移行またはどちらが行っても大丈夫なように、といった意味でしょう。
引用元からも分かるように、少なくとも10年くらい前からこの考えはあったようです。
法改正により具体的にできるようになること
ザっとまとめてみると以下のような形になります。
- 造影剤を使用した検査やRI検査のために、静脈路を確保する行為
- RI検査医薬品を注入するための装置を接続し、当該装置を操作する行為
- RI検査医薬品の投与が終了した後に抜針及び止血する行為
- 動脈路に造影剤注入装置を接続する行為(動脈路確保のためのものを除く。)
- 動脈に造影剤を投与するために当該造影剤注入装置を操作する行為
- 下部消化管検査のため、注入した造影剤及び空気を吸引する行為
- 上部消化管検査のために挿入した鼻腔カテーテルから造影剤を注入する行為、
当該造影剤の投与が終了した後に鼻腔カテーテルを抜去する行為 - 医師又は歯科医師が診察した患者について、その医師又は歯科医師の指示を受け、病院又は診療所以外の場所に出張して行う超音波検査
(これらは「第7回 医師の働き方改革を進めるための タスク・シフト/シェアの推進に関する検討会」資料6よりまとめています)
以前行われた業務拡大と重なる部分もありますが、法改正後も継続していくようです。
いつ頃からルールが変わるのか
タスク・シフト/シェアの実施は2024年度を目指しているようです。
法令改正が具体的にいつ実施されるかは不明ですが、我々の業務がさらに拡大するのはおそらく2024年度辺りでしょう。
個人的な見解
タスク・シフト/シェアによって医師の業務の一部を放射線技師が行う日も近づいています。
個人的に気になっているのは「造影剤を使用する検査やRI検査のために静脈路を確保する行為」です。
認められるのは良いとして、現在の運用に果たしてマッチするのだろうか…
静脈路確保(ルート確保)は看護師が行う施設もあります。つまり医師のタスク・シフトにはならないので、当初の目的とはズレます。
また、これらの行為ができるようになったとしても、「医師の具体的な指示の下で実施すること」が留意点として挙げられています。
ある意味責任の元は結局医師にあるわけですね。そして、これらの作業を我々放射線技師が行っている間に医師が別の作業を効率良くできるのかも論点になると考えています。
僕としては、この「タスク・シフト/シェア」という考えには賛成していますので、医療従事者の働く環境がより良いものへ進んでいけば良いなと考えています。